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作品一覧

作者 兵庫県 榮福寺 岡崎哲秀

本文
上段 五大皆有響 十界具言語 六塵悉文字 法身是実相
下段 勧善遮悪偈
朝暮例時 僧徒行儀 上回三宝 下施冥衆 令守宗場 紹隆人法 遑干他事 不可懈怠 如説勤行 貫接万善 報四恩徳 済六趣生 如来説言 不高不下 不緩不急 其音和雅 誦之観之 速成悉地 愚悪僧徒 好懈怠者 適列会座 早口為事 出異曲音 作哀歎声 不共多分 脱落字句 名欠支分 如是悪人 無冥加護 不成悉地 常招災難 其処廃亡 見彼得失 示此勧誡     為二三子 結十行偈 冀改昨非 行明日是 興隆三宝 円満二利 応永廿二暦正月二日記之 権少僧都宥快
意味
上段 五大はすべて仏の声や響きを具え持つ 十界のいたるところに仏の言葉が潜む
この世界に存在するもの全て仏の文字であり 仏の御身は真理そのものに他ならない
下段 善を勧め悪を遮る偈
朝夕のお勤めは 僧徒の行儀 三宝(仏・法・僧)に帰依し 諸神から鬼に至るまで施し供養す 修行の場を守り 人と教えを盛んにする 他のことにかかり 懈怠してはならない 仏の教えの通り勤行すればあらゆる善事を招き 四恩の徳に報謝し 六道の生き物を救う 御仏の説法の声は 高くも低くもなく遅くも早くもない その音はいわれもなく素晴らしい これを唱えこれに思いをめぐらせば速やかに悟りの境地に至る 愚かな僧徒や 懈怠を好む者は 偶然に法会に参加するとき 早口に唱え異なる音を出し 悲しみ嘆く 周りとお経を合わせられず 文句を脱落する これを欠支分と名づける このような不真面目な人は 神仏の加護無く 悟りの境地に至れない 常に災難を招き その場所衰退する
彼らの失敗を見て この戒めを示す 弟子等の為に 十行の偈を綴る 願わくは昨日の過ちを改め明日の行いを正し 三宝を盛り立て 自利(修行により自分の功徳を増す)・利他(自分の功徳を他者に施し救済する)を備えよ
応永廿二暦正月二日これを記す 権少僧都宥快
所見
仏道修行を始めて今年で十年となりました。
この十年の間にたくさんの出会いと別れを経て、多くの方の助けを受けつつ様々な経験をいたしました。しかしながら、仏法は奥深くまだまだ自らの未熟さを感じるばかりです。
これからの修行のために改めて自分の目標と修行に対する姿勢を確認しようと思い、上段に修行の末に自らが至りたい境地を下段に江戸時代に活躍された宥快法印が僧侶に対して示された戒めの偈文を写本の通り書きました。
仏の教えはあらゆるところに様々な形で存在しているという仏教の壮大な考えと日々の生活の大切さを説いた宥快法印の言葉とが自分の中で融和していくように精進したいです。
出典名
上段 声字実相義

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